SLII実践ガイド

SLII理論を活用した効果的な1on1の実践:部下の成長を促す対話設計

Tags: SLII, 1on1, 人材育成, リーダーシップ, コミュニケーション

1on1セッションにおけるSLII活用の重要性

現代の組織において、1on1セッションは部下との個別的なコミュニケーションを通じて、目標達成支援、キャリア開発、エンゲージメント向上などを図る重要な機会として広く導入されています。しかし、その効果はリーダー(マネージャー)のスキルに大きく依存し、形式的な面談に終わってしまうケースも少なくありません。

ここで、シチュエーショナル・リーダーシップ(SLII)理論が有効な指針となります。SLIIは、部下の特定のタスクや目標に対する発達レベルを診断し、そのレベルに最適なリーダーシップスタイルを柔軟に使い分けることを提唱するモデルです。1on1はまさに、リーダーが部下と一対一で向き合い、その時々の状況に合わせて関わり方を変える必要のある場であり、SLIIのフレームワークを適用することで、より個別最適で効果的な対話を実現することが期待できます。

本稿では、SLII理論を1on1セッションにどのように活用できるのか、その具体的な実践方法とポイントについて解説します。

SLIIの基本フレームワークと1on1への適用

SLII理論は、主に以下の要素で構成されます。

1on1セッションにおいてSLIIを適用するということは、セッションの主題となるタスクや目標について、部下が現在どの発達レベルにあるのかを正確に診断し、そのレベルに最適なリーダーシップスタイル(S1-S4)に基づいた対話を行うということです。これにより、一方的な指示や、部下の状況に合わない不用意な励ましなどを避け、部下の成長段階に応じた最も効果的な関わり方が可能になります。

1on1セッションでのSLII実践ステップ

1on1セッションでSLIIを活用するための具体的なステップは以下の通りです。

ステップ1:セッション開始前の準備

1on1をより効果的にするために、事前に部下の状況を把握しておくことが重要です。話し合う予定の特定のタスクや目標について、部下が現在どの発達レベルにあるかを予測します。これまでのパフォーマンス、最近の言動、プロジェクトの進捗状況などを踏まえて仮説を立てます。ただし、この時点での診断はあくまで仮説であり、セッション中の対話を通じて確認・修正することを前提とします。

ステップ2:セッション中の状況診断

セッションが始まったら、まずは部下の話に耳を傾けることから始めます。表面的な状況だけでなく、そのタスクに対する部下の「意欲」と「能力」を深く理解しようと努めます。

傾聴と質問を通じて得られた情報をもとに、部下の発達レベル(D1-D4)を診断します。この診断結果が、その後の対話の方向性を決定する基盤となります。

ステップ3:SLIIスタイルに基づいた対話の実施

診断した部下の発達レベル(D)に対応するリーダーシップスタイル(S)に基づき、対話を進めます。

ステップ4:合意形成と次へのアクション設定

対話を通じて部下の状況を理解し、最適なスタイルで関わった後、タスクや目標に関する次へのアクション、期待される成果、必要なサポートなどについて部下と合意形成を行います。これはSLIIにおける「リーダーシップ契約」の要素を含みます。リーダーと部下双方の役割や責任を明確にし、認識のずれがないようにします。

ステップ5:セッション後のフォローアップ

1on1で合意した内容に基づき、部下がタスクを遂行している間、適切な頻度で進捗を確認し、必要に応じて再度状況診断を行い、リーダーシップスタイルを調整します。次の1on1セッションに向けて、部下の状況変化(発達レベルの変化)を観察し続けることが重要です。

発達レベル別(D1-D4)1on1対話の具体的なポイント

ここでは、各発達レベルに応じた1on1での対話における具体的なポイントをいくつか補足します。

1on1におけるSLII実践を成功させるためのヒント

研修プログラムへの組み込み方

企業の研修企画担当者様は、1on1スキル研修やリーダーシップ研修の中にSLII理論を効果的に組み込むことで、リーダーの1on1実践力向上を図ることができます。

まとめ

1on1セッションは、リーダーが部下の成長を個別最適に支援するための極めて重要な機会です。SLII理論を1on1に活用することで、リーダーは部下の特定のタスクに対する発達レベルを正確に捉え、その状況に最も適したリーダーシップスタイル(指示的、コーチング的、支援的、委任的)で関わることができます。

部下の能力と意欲を深く理解するための傾聴と質問、そして診断に基づいた柔軟なスタイルスイッチングが、効果的な1on1実践の鍵となります。SLIIを研修プログラムに取り入れることで、リーダーの1on1スキル向上だけでなく、組織全体のマネジメント力強化、ひいては部下のエンゲージメントとパフォーマンス向上に繋がるでしょう。ぜひ、貴社のリーダー育成において、SLIIを活用した1on1の実践をご検討ください。